こんなことを感じたことはありませんか?

夏は、結婚について考えやすい季節かもしれません。帰省や親戚の集まり、友人の結婚報告など、いろいろなきっかけで、ふと自分のこれからを思う方が多いように感じます。
- まわりが結婚していくのを見て、少し焦る
- 「結婚したら幸せになれる」と思う一方で、確信は持てない
- 独身のままでも楽しいし、これでいいのかもしれないとも思う
どれも、とても自然な揺れです。「結婚したい」と「このままでもいい」が両方あって大丈夫です。どちらかに、いま決めなくても大丈夫です。迷っていること自体が、あなたが自分の人生を大切に考えている証だと思います。
そんなときは、他の人の意見からいったん離れて、「研究者はどう見ているのか」をのぞいてみるのも、ひとつの整理の仕方です。
今日紹介する研究について
ご紹介するのは、心理学者 リチャード・ルーカス氏 らによる研究です。
- 論文:Reexamining Adaptation and the Set Point Model of Happiness: Reactions to Changes in Marital Status
- 発表年:2003年(Journal of Personality and Social Psychology)
- 著者:Lucas, Clark, Georgellis, Diener
- 規模:約15年にわたり、24,000人以上 を追跡
この研究のすごいところは、「結婚した人と独身の人、どちらが幸せか」を一度だけ比べたのではなく、同じ人の幸福度が、結婚という出来事の前後でどう動いたか を、長い年月をかけて追いかけた点です。
「幸福度の研究」と聞くと難しそうですが、扱っている問いはとても素朴です。「大きな出来事があったとき、人の幸せはどう変化して、その後どうなるのか」。ただそれだけです。すごい研究だから従いましょう、という話ではなく、私たちの毎日の幸福感の動きを、丁寧に観察したものだと思ってください。
研究が明らかにしたこと|ポイントは3つ
たくさんの発見の中から、婚活を考える私たちに役立ちそうな点を、3つに絞ってお話しします。
①結婚で幸福度は上がる。でも、数年で慣れていく
まず、結婚の前後では、多くの人の幸福度が いったん上がる ことが分かりました。新しい生活への期待や喜びを思えば、うなずける結果です。
ところが、その上がった幸福度は、平均するとおおむね数年で、結婚前の水準へ戻っていく 傾向がありました。これは「快楽の踏み車(ヘドニック・トレッドミル)」と呼ばれる考え方で説明されます。人は、うれしい出来事にも少しずつ慣れていく、というものです。
たとえば、ずっと欲しかったものを手に入れた高揚感が、しばらくすると当たり前になっていく感覚に似ています。これは冷たい話ではなく、人が環境に順応できる、しなやかな力の裏返し でもあります。
②「平均」では見えない、大きな個人差
ここが、私がいちばん大切だと感じる点です。「数年で戻る」というのは、あくまで たくさんの人をならした平均の話 でした。
同じ研究の中で、ルーカス氏らは 個人差がとても大きい ことも見つけています。強く幸福度が上がった人の中には、数年たっても高いまま保たれている人がいました。反対に、平均とは逆の動きをする人もいました。つまり「結婚すれば誰でもこうなる」という単純な法則は、そこにはなかったのです。
平均だけを見て「結婚しても幸せは続かない」と結論づけるのは、少し早すぎる。そう教えてくれる結果です。
③幸福度が高いまま保たれた人がいた
では、順応せずに幸福度が高いまま保たれた人と、そうでない人。その違いはどこにあったのでしょうか。
研究や関連する議論が示すのは、築けた関係の「質」 が大きく関わっている、ということです。日本のパネル調査でも、配偶者の存在が幸福度に大きく影響することが報告されていますが、同時に「平均値では見えない、既婚者の中の幸福度の差」に触れる議論もあります。
「結婚したかどうか」だけでなく、「どんな関係を築けたか」が、幸せの続き方を左右する。これが、3つのポイントを通して見えてくる、静かな答えです。
これは、私たちの婚活にどう関係するか
研究の話を、婚活に翻訳してみます。といっても、「だから結婚しましょう」という話ではありません。
見えてくるのは、「結婚するかどうか」以上に、「誰と、どんな関係を育てるか」が大切 だということです。制度としての結婚は、いわば手段。幸せの続き方を決めるのは、その先の関係性の質のほうでした。

だとすれば、婚活で大事にしたいのは、条件のチェックよりも、こんな視点かもしれません。
- 一緒にいて、素の自分でいられそうか
- うれしいこと・困ったことを、分かち合えそうか
- 意見が違っても、話し合いを続けられそうか
これは、以前ご紹介した夫婦の会話量と結婚満足度の研究とも重なります。関係の質は、会話の積み重ねの中で育っていくものだからです。「結婚がゴール」ではなく、「そこから始まる関係を、一緒に育てられる人か」という視点。これも、こう考える方が増えている、ひとつの見方として受け取っていただけたらと思います。
そして念のため申し添えると、この研究は「独身は幸せではない」と言っているわけではありません。独身のままの幸せも、同じように尊いもの です。大切なのは、まわりの平均ではなく、あなた自身が納得できる道を選ぶことだと思います。
現場で感じること
カウンセラーとして見ていても、研究とつながる場面があります(内容は一般化しています)。
「早く結婚したい」という気持ちが強い方より、「この人となら、一緒に幸せを育てていけそう」と感じられる相手を、じっくり選ばれた方 のほうが、成婚後も落ち着いた関係を続けていかれることがよくあります。
反対に、「結婚さえできれば」と条件やスピードを優先しすぎると、いざ一緒に暮らし始めてから、すり合わせに苦労されることもあります。これは「どちらが正しい」という話ではなく、幸せは"手に入れるもの"ではなく"育てていくもの" なのだと、現場でも感じます。
だからこそ、私は焦って結婚を勧めることはしません。「いつ結婚するか」より「どんな関係を築きたいか」を、一緒に言葉にしていくことを大切にしています。
研究の限界、あえて補足したいこと
公平を期すために、今日の研究の限界にも触れておきます。
- 研究は主に海外のデータで、文化や時代によって結婚の意味は変わります
- 「順応」はあくまで 平均的な傾向 で、個人差はとても大きい
- 幸福度と結婚の関係は 相関であって、単純な因果と断定はできません(幸せな人が結婚しやすい、という向きもあり得ます)
そして最も大切な補足を、もう一度。この研究は「結婚しないと不幸」とは言っていません。 独身の幸せも、結婚の幸せも、どちらも本物です。この記事を「結婚を急ぐ理由」として握りしめる必要は、まったくありません。

まとめ|あなたの今に持ち帰ってもらえたら
お盆に、自分の幸せについて考えてくださって、ありがとうございます。今日お伝えしたかったことを振り返ります。
- 結婚は幸福度を上げるが、多くの人は数年で順応していく
- ただし個人差は大きく、「平均」だけでは語れない
- 幸福度が高いまま保たれるかは、「関係性の質」が大きい
- だから大切なのは「結婚するか」以上に「誰と、どんな関係を育てるか」
結婚は、幸せの正解でも、不正解でもありません。幸せは、手に入れて終わりではなく、誰かと育てていくものです。その相手を探すことも、ひとりの幸せを選ぶことも、どちらもあなたの自由です。
もし「自分にとっての幸せを、誰かと話しながら整理してみたい」と感じられたなら、無料相談でお話を聞かせてください。結論を出す場ではなく、あなたの気持ちを言葉にする時間です。実際に何をするのかは、はじめての無料相談、本当のところ何をされる?にも率直に書いています。感想やご自身の考えを聞いてほしいだけ、という方は、LINE相談からでも大歓迎です。
札幌のアンフィで、お会いできるのを楽しみにしています。
📚 このシリーズの他の記事
📖 引用研究
- Lucas, R. E., Clark, A. E., Georgellis, Y., & Diener, E. (2003). Reexamining Adaptation and the Set Point Model of Happiness: Reactions to Changes in Marital Status. Journal of Personality and Social Psychology, 84(3), 527–539.
- Lucas, R. E., & Clark, A. E. (2006). Do People Really Adapt to Marriage? Journal of Happiness Studies.
- 亀坂安紀子・吉田恵子・大竹文雄「ライフステージの変化と男女の幸福度」行動経済学会誌 ほか
